綺麗さびの極み

コロア 宗宙 東京支部/準師範

更新日:2020.01.9
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ロジカルなルールこそが、茶道の魅力です!
~難しいと感じる作法にも、必ず理由がある~

アジアNo.1と言われるシンガポール国立大学でコンピュータを学び、現在は機械学習エンジニアとしてAI開発に携わっているコロア 宗宙(そうちゅう)さん。
そんなコロアさんに、外国人から見た遠州流茶道の魅力をお聞きしてきました。

-初めに、来日される前のことをお聞かせください。
出身はインドネシアですが、15歳の時からシンガポールで暮らしていました。大学を卒業してから3年ほどそのままシンガポールで働き、その後、日本へ来ました。

-ご家族は、シンガポールにお住まいですか?
いえ、今でもインドネシアですよ。シンガポールに渡ったのは進学のためで、私一人だけです。

-15歳で単身、外国で暮らすのは大変そうですね。
単身と言っても寄宿学校ですから寮生活ですし、同じように奨学金を貰って進学してきている仲間もたくさんいましたので、特に寂しいということはなかったです。

-とても日本語が上手ですが、来日してどれくらいですか?
まだ、一年くらいですね。

-えっ! 一年ですか?
そうです。日本語は大学の時に外国語の必修で選択していました。
専攻はコンピュータなのですが、日本語の授業も週に7時間あったので、必然的に話せるようになっていましたね(笑)
それに、もともと日本の文化に興味があったというのも大きいです。

-日本の文化に興味を持ったきっかけは?
アニメです!
それこそ小さい頃からドラえもんやセーラームーンといった日本のアニメで育ちました。インドネシアでも日本のアニメは大人気ですよ。漫画もかなり発行されています。
その後、学生時代に交換留学生として実際に日本に滞在して、いずれこの国で生活したいと思うようになりました。

-それで、お仕事の関係で来日することができたと。
いえ、それもちょっと違いまして・・・
確かに大学を卒業後、シンガポールで仕事をしていましたが、本当ならすぐにでも日本に来たかった。でも、卒業後のシンガポールでの就業が奨学制度の条件としてあったので、すぐに来ることはできなかったのです(笑)

-茶道との出会いを教えてください。
私が通っていたシンガポール国立大学には日本研究学科もあって、日本の伝統文化を学べる部活動も盛んでした。
もともと日本の文化に興味を持っていましたし、何か日本語の学習の手助けにもなるようなことをしたいと探していたところ、たまたま友人に誘われたのが茶道部だったのです。
そして、その茶道部で教えられている茶道が遠州流でした。

-シンガポール国立大学の茶道部は創立30周年。
 かねてから遠州流が力を入れている活動の一つです。

現在のお家元も毎年欠かさず自ら赴いて、普及活動を行っていらっしゃいます。実は私も、在学中にお家元の手ほどきを受けたことがあるんですよ!

-茶道に抵抗はありませんでしたか?
日本に茶道という文化があることは知っていましたし、シンガポールでもごく普通にスーパーなどで緑茶は売っていますから、特に抵抗はなかったです。
高くて学生には手が出なかったですが、デパ地下には和菓子も売っていますしね。
でもやはり、最初は正座には苦労しました(苦笑)

-外国人であるコロアさんから見て、茶道の魅力とは
 どのようなところでしょうか?

大きく分けて二つあります。
一つは、とても「ロジカル」なところです。
私たち外国人からすると、茶道は細かいルールが多くて難しいと感じます。私も最初はそうでした。手順も煩雑で、こなすだけで精いっぱいでした。

-私たち日本人の間でも、「細かくて堅苦しい」という
 イメージが強く根付いています。

でも、少しずつ慣れてきてお点法をしっかり見る余裕が出てくると、その一つひとつにはちゃんと意味があるのだということが分かってきます。
例えば茶碗や茶杓の動かし方を一つとってみても、実は最終的な目標(=何をするか)から逆算して無駄のないように順番が決められているのです。

-一見すると意味の分からない動作にも理由があると。
そんな「理由」が分かってくると、それまで「細かくて難しいルール」だと思っていたものが、自然と受け入れられるようになります。
そして他にも「これはどうしてだろう?」「なぜこうするんだろう?」という疑問が、次から次へと湧いてくる。それが面白くてどんどんはまってしまいました。
中にはもちろん、禅問答のように哲学的なふわっとした理由もありますけどね(笑)

-学校教育にも採り入れられているからでしょうか、日本人からすると、
「無条件で守らなければならない規則」のように感じている部分があるような気がします。

もしそうだとしたらもったいないですよ!
まずは自分で考えてみて、分からなかったら聞けばいいんです。
絶対に「なるほど」という答えが返ってきますから!

-もう一つの魅力は、どんなところですか?
やはり、日本文化のより深いところまで関わることができることですね。
茶室や装飾、道具など、茶道には日本で育まれた芸術のすべてが詰まっていると言っても過言ではありません。それに、礼儀作法や相手を思いやる精神といった日本人の奥底にある心や考え方を学ぶこともできます。さらには、四季がある日本ならではの季節に応じた生活習慣など、日本の伝統文化のあらゆる要素が備わっているのです。
茶道を続ければ続けるほど、一つひとつの奥深さを実感できて、本当に「日本人のルーツ」が分かるような気がします。

-茶道において、もっとも大切にされていることは何でしょう?
思いやりの気持ちですね。まさに「おもてなしの精神」です。
亭主にとって一番大切なのは、お茶ではなくてお客さま。もてなされる客人も、亭主や列席している他のお客さまへの気配りを忘れない。とにかく「一番大切なのは自分ではない」という相手を敬う気持ちが、もっとも大切だと感じます。

-コロアさんが感じる、遠州流の魅力はどんなところですか?
個人的にはとてもフランクでおおらかだと感じています。武家茶道なので、お辞儀の仕方一つとってもダイナミックな印象がありますが、見た目だけでなく心の広さも兼ね備えていると思います。
外国人の場合、和菓子に興味を持ってそこから茶道に入るケースも多いですが、反対に和菓子が苦手な人にとっては敬遠しがちでもあります。でも、お稽古の時にはケーキやチョコレートといった洋菓子に合わせることもあるなど、とてもフレキシブルです。
実際に、海外のイベント(フランスだったと思いますが、違っていたらごめんなさい)でお家元がお点法を披露した際、茶菓子としてチョコレートを振舞ったという話を聞いたこともあります。

-最後に、コロアさんにとって茶道とは何ですか?
やらなければいけないことのストレスから解放されて、頭を切り替えることができる。気の合った仲間と楽しい時間が過ごせる平穏な空間ですね。
実は、今、お付き合いしている女性も、茶道を通して知り合った方だったりします(笑)

プロフィール

コロア 宗宙(ころあ そうちゅう)
出身地:インドネシア 年齢:28歳 茶道歴:8年 所属支部:東京支部(準師範)


古田 宗祥 鳥取支部理事/上席家元参与

更新日:2019.09.5
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勘違いしていませんか?
茶道は地味ではありません!
~大人しい子ほど積極的になれるのが茶道の魅力~

茶人一家に生まれた古田宗祥さん。幼少期から茶道と共に育ったご自身の経験から、幼稚園や小学校などさまざまな場所で子どもたちに茶道を教えています。
また、お父さまの中尾宗澄氏と共に立礼の教室を開くなど、積極的に遠州流茶道の普及に携わっています。

-遠州流茶道を始めたきっかけを教えてください。
父(中尾宗澄氏/前本部理事長)が遠州流をこよなく愛しており、物心のつく前から遠州流の茶道がすぐそばにあったというのが正直なところです。
幼稚園の園長先生も遠州流で、卒園時に園長先生からお誘いをいただき、小学校1~3年生の時は園長先生のお宅でお稽古をつけてもらいました。そして4年生になって、父や園長先生の師である家元補佐 一庵 加須屋宗生先生のもと、正式に遠州流に入門しました。
言うなれば、父と私は“兄弟弟子”ということになりますね。

-お父さまから教えを受けたことは?
子どもの頃は父も現役で仕事をしていましたから当然ですが、退職後に自分のお稽古場を開いてからも、父に教えを受けたことはありません。きっと、親子で師弟関係を維持するのは難しいと思っていたのかも知れませんね。
確かに私も、自分のお稽古を父に見られるのはあまり心地の良いものではなかったので、父が師匠だったら、続けられていたかどうか・・・(苦笑)
最近になってから、「えっ! 親子だったの!?」と驚かれることもあります(笑)
3月の遠州忌では、父を正客として私がお点法を披露する機会を頂いたのですが、本当に幸せなひと時でした。心なしか父も、いつもより顔が綻んでいたような気がします。

-現在は、小さいお子さんたちに積極的に教えていらっしゃいますね。
物心ついた頃には茶道をやっていたので、今の自分は茶道を通じて作られたと感じています。今こうして、私が子どもたちと向き合い、お茶を続けることが、師の一庵 加須屋宗生先生始め、茶道を通じて私と関わってくれたすべての方への恩返しと思っています。

-小さいお子さんに茶道を教える時、特に気をつけていることはありますか?
まだ手も身体も小さい子どもたちですから、基本的にお点法は難しいです。上手くお茶なんて点てられませんし、帛紗捌きなどもってのほか。それよりも、お茶やお菓子を通じて、私や同席する人との関わり方を中心に教えています。
例えば「お先です」「大変、結構でございます」「ごちそうさまでした」の言葉は、必ず言うようにしています。小さい子どもというのは、新しく覚えた言葉はすぐに使いたくなるものです。最初は意味など分からなくても、使い続けていくうちに、これらは相手を思いやるための言葉なのだと、自然と気づいてくれます。また、左利きの子がいたとしても、無理やり右手を使わせることはしません。でも、自分が左手で使った箸は、きちんと右側に置こうね、と教えます。そうすれば、次の子が箸を使いやすいでしょ、と。

-子どもたちが、茶道を通して成長したな、と感じるのはどんな時ですか?
床の間に飾る花が変わっているのを見つけたり、掛軸に書かれている文字の意味や読み方に興味を持ったり、身の回りのちょっとした変化に気づけるようになった姿を見た時などは、成長を感じます。そこから、このお花は幼稚園の裏の森で摘んできたんだよ、といった具合に点と点をつなげたりしてあげることで、子どもの世界がぐっと広がっていくのも感じます。
こういった、ちょっとした気づきの積み重ねが、相手を思いやる気持ちやおもてなしの精神につながっていくのだと思います。

-小さい頃から茶道を習うメリットは、どんなことですか?
一般的に言われているように、集中力が身に付くというメリットはあると思います。私自身、小学校5年生の時に、お点法をしている時には何も考えていないという“無の境地”を体感しましたから(笑)。
姿勢を始めとした所作の美しさも、小さい頃ほど差が際立ちますね。放課後のクラブ活動で教えている小学校の卒業式などに出席すると、その違いは歴然です。
でも実は、例えば引っ込み思案なお子さんだったり、大人しいお子さんだったり、そのようなお子さんこそぜひ茶道をやってみて欲しいと思っています。
茶道は、自分ですべてを行わなければなりません。もちろん、お茶会の時などは役割がありますが、一度お客さまの前に座ってお点法を始めたら、最後まで自分ひとりでやり切らなくてはなりません。お茶を点てるのもお客さまとお話しをするのも、すべて自分ひとり。
静かではありますが、決して大人しいものではないのです。
やんちゃなお子さんには落ち着いた心を学んでもらえると思います。消極的なお子さんなら、自ら動く積極性を身に着けられるでしょう。あまり感情を表に出さないお子さんでも、しっかりと心の中に溌溂とした気持ちを育むことができると思います。
茶道を通して身につくことは、本当に多いですよ。

-遠州流の特色は、どんなところですか?
所作やお点法、立ち居振る舞い、取り合わせ・・・一つひとつが美しく、総合的な美を感じます。
お道具組が豊かで、お着物も華やかなものや綺麗なものでも選べます。

-茶道の時の着物というと、
 どうしても地味なイメージがありますが・・・

千家さんなどいわゆる“詫び寂び”と呼ばれる世界観は、余分なものを可能な限り削ぎ落したシンプルさが特徴です。きっと茶道と聞くと、そちらのイメージが強いのでしょうね。
でも遠州流の“綺麗さび”は、質素な中にもきらりと輝く華やかさのある世界です。だからお着物にしても、色無地だけでなく訪問着や付下げなども多く使用されます。四季折々の綺麗な着物を着ることができるのは、女性からしてみれば、大きなポイントかも知れません。
だからこそ、若い女性にも、もっともっと遠州流茶道に触れていただきたいですね。自分が最も綺麗な時に、華やかな着物を着た凛とした姿を、美しい所作で立ち振舞う姿を、たくさんの人に見てもらうことができる。
こういった経験は、女性としてのその後の人生にも、必ず生きるはずだと思います。

プロフィール

古田 宗祥(ふるた そうしょう)
出身地:鳥取県 年齢:62歳 茶道歴:52年
所属支部:鳥取支部(鳥取支部理事/上席家元参与/元青年部全国連合会理事/元遠州流茶道連盟本部理事)


齋藤 宗純 東京支部/全国青年部連合会理事

更新日:2019.04.19
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映画はエンドロールまで見るようになりました(笑)
~目にするものの、その後ろ側まで見たくなる~

航空自衛隊で建築系の仕事に従事している齋藤宗純さん。仕事柄、3年ほどで異動を繰り返しながら日本全国を渡り歩いているそうで、これまでに所属した支部の数は実に7つ。
現在は東京支部にて、全国青年部連合会理事を務めています。

-なぜ、茶道を始めたのですか?
入門したのは今から20年近く前になります。
当時、私が仕事をしている航空自衛隊では、イラクやクウェートといった海外地域への派遣が多く、私も派遣要員として希望していました。もし派遣された際には、現地の方と交流したいと考えていたところ、たまたまアラブ諸国ではお茶好きな方が多いという話を聞いたのです。
そこで、日本の代表的な文化の一つである茶道を、お茶好きなアラブの方々に披露できたらいいなと思い、入門に至りました。

-それまでに茶道の経験はありましたか?
いいえ、一切ありません。生まれは岩手なのですが、それこそ小さい頃は野球一色で、茶道の「さ」の字も知りませんでした(笑)
それなのに、イベントや体験教室などに行くことも一切せず、タウンページを開いて近くの教室を探し出して、いきなり教室の門を叩いてしまいました。今考えれば、かなり無謀な話です。

-なぜ、数ある流派の中から遠州流を選んだのですか?
入門にあたっていろいろと調べていたところ、小堀遠州や片桐石州といった名前を見つけました。元々、歴史好きだったため、思わず飛びついてしまいました。そして「武家茶道」という言葉に行きつき、「習うならこれだ!」と(笑)
その中で、たまたま家に近く通いやすそうだったのが、秋田支部の故根田宗哲先生の教室でした。もしあの時、秋田という遠州流の盛んな地域に赴任していなかったら、他の流派の茶道を習っていたかも知れません。
ですので、申し訳ないのですが、他の流派との違いを知った上で選んだわけではありません。ただ、私が言うのも変ですが、それでいいのかなと思います。私のように、「ただ歴史が好きだったから武家茶道という言葉に反応してしまった」という理由でも、始めれば良い出会いは必ずありますから。

-実際に入門されて、いかがでしたか?
まず初めに、女性の多さに驚きました(笑)
宗哲先生も、お名前の漢字を見て「どんないかついお爺ちゃんなんだろう?」と思って行ってみたら、とても品のいいお婆ちゃんで。もちろん、お弟子さんも私以外はすべて女性でした。
茶道が女性の嗜みであるということは知っていたつもりなのですが、恐らく武家茶道という言葉の響きから、勝手に「その中でも男性が多いのではないか」と思っていたのでしょうね。
職場が男性ばかりですから、決して悪い気はしませんでしたが(笑)

-ご自身で感じる、遠州流の特色は、どんなところですか?
イベントなどで他の流派を拝見する機会も多くありますが、お点法(お点前)が流れるように進むのでとても綺麗だなと感じます。
それから、高名な先生方との距離感が近いというのも、遠州流の良いところではないでしょうか。私でも年に2回くらいは、お家元の眼前でお点法を披露する機会がありますが、他の流派ではなかなかないことのようです。お家元に会える機会すら滅多にないと、お聞きしました。

-茶道を通して身についたと感じることはありますか?
身に付いたことと言えば、やはり、おもてなしの心です。
お茶会などでは、お客さまに美味しいお茶を召し上がっていただくために様々な趣向を凝らしてお迎えするのですが、客として参加したり、亭主として先生のお手伝いをしたりといった主客両方を経験することで、もてなすということの意味を、きちんと理解できるようになったと思います。
それは簡単に言ってしまえば、一番に考えるのは自分のことではなく、相手のことだということでしょう。言葉にすると簡単なのですが、それを実感させてくれたのが茶道です。

-茶道を経験することで、それ以前とは変わったなと思うことはありますか?
おもてなしの意味とも関係するのですが、日常生活の至る場面で目にするものや口にするもの、手に触れるものを大切にするようになったと思います。作った方のことはもちろん、素材や作り方、歴史など、それらの背景というものを考えるようになりました。相手のことを第一に考えるという精神に通じるものだと思います。
例えばですが、映画はエンドロールまでしっかりと見るようになりました(笑)
仕事柄、色々な土地に行っていますので、ロケ地のことも気になるようになりましたし、どなたが方言指導や所作指導をされているのかも気になるようになりました。気が付くと、その奥にまで考えを巡らせているのです。

-最後に、ご自身にとって茶道とは何ですか?
心の中までご指導いただける、素晴らしい精神的な修行の場だと思います。
不思議なもので、雑念が入ったお茶をお出しすると、必ず先生に見透かされてしまいます。間違えないようにしよう、綺麗に見せようと思うと、すぐにお叱りのお言葉が返ってくるのです。
現在の世の中は、どちらかというと見た目を重視しがちな社会です。特に仕事をしていると、体裁だけ繕うような場面に数多く遭遇します。そして、そのような場面で卒なくこなせることが求められる社会であるとも言えるでしょう。
そんな中で、茶道は、見た目ではなく中身が重要だと気付かせてくれる場です。 これからもずっと、私にとって茶道は、自分自身を磨き高めるための勉強の場であり続けてくれると思います。

プロフィール

齋藤 宗純(さいとう そうじゅん)
出身地:岩手県 年齢:42歳 茶道歴:18年 所属支部:東京支部(全国青年部連合会理事)