齋藤 宗純 東京支部/全国青年部連合会理事

更新日:2019.04.19
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映画はエンドロールまで見るようになりました(笑)
~目にするものの、その後ろ側まで見たくなる~

航空自衛隊で建築系の仕事に従事している齋藤宗純さん。仕事柄、3年ほどで異動を繰り返しながら日本全国を渡り歩いているそうで、これまでに所属した支部の数は実に7つ。
現在は東京支部にて、全国青年部連合会理事を務めています。

-なぜ、茶道を始めたのですか?
入門したのは今から20年近く前になります。
当時、私が仕事をしている航空自衛隊では、イラクやクウェートといった海外地域への派遣が多く、私も派遣要員として希望していました。もし派遣された際には、現地の方と交流したいと考えていたところ、たまたまアラブ諸国ではお茶好きな方が多いという話を聞いたのです。
そこで、日本の代表的な文化の一つである茶道を、お茶好きなアラブの方々に披露できたらいいなと思い、入門に至りました。

-それまでに茶道の経験はありましたか?
いいえ、一切ありません。生まれは岩手なのですが、それこそ小さい頃は野球一色で、茶道の「さ」の字も知りませんでした(笑)
それなのに、イベントや体験教室などに行くことも一切せず、タウンページを開いて近くの教室を探し出して、いきなり教室の門を叩いてしまいました。今考えれば、かなり無謀な話です。

-なぜ、数ある流派の中から遠州流を選んだのですか?
入門にあたっていろいろと調べていたところ、小堀遠州や片桐石州といった名前を見つけました。元々、歴史好きだったため、思わず飛びついてしまいました。そして「武家茶道」という言葉に行きつき、「習うならこれだ!」と(笑)
その中で、たまたま家に近く通いやすそうだったのが、秋田支部の故根田宗哲先生の教室でした。もしあの時、秋田という遠州流の盛んな地域に赴任していなかったら、他の流派の茶道を習っていたかも知れません。
ですので、申し訳ないのですが、他の流派との違いを知った上で選んだわけではありません。ただ、私が言うのも変ですが、それでいいのかなと思います。私のように、「ただ歴史が好きだったから武家茶道という言葉に反応してしまった」という理由でも、始めれば良い出会いは必ずありますから。

-実際に入門されて、いかがでしたか?
まず初めに、女性の多さに驚きました(笑)
宗哲先生も、お名前の漢字を見て「どんないかついお爺ちゃんなんだろう?」と思って行ってみたら、とても品のいいお婆ちゃんで。もちろん、お弟子さんも私以外はすべて女性でした。
茶道が女性の嗜みであるということは知っていたつもりなのですが、恐らく武家茶道という言葉の響きから、勝手に「その中でも男性が多いのではないか」と思っていたのでしょうね。
職場が男性ばかりですから、決して悪い気はしませんでしたが(笑)

-ご自身で感じる、遠州流の特色は、どんなところですか?
イベントなどで他の流派を拝見する機会も多くありますが、お点法(お点前)が流れるように進むのでとても綺麗だなと感じます。
それから、高名な先生方との距離感が近いというのも、遠州流の良いところではないでしょうか。私でも年に2回くらいは、お家元の眼前でお点法を披露する機会がありますが、他の流派ではなかなかないことのようです。お家元に会える機会すら滅多にないと、お聞きしました。

-茶道を通して身についたと感じることはありますか?
身に付いたことと言えば、やはり、おもてなしの心です。
お茶会などでは、お客さまに美味しいお茶を召し上がっていただくために様々な趣向を凝らしてお迎えするのですが、客として参加したり、亭主として先生のお手伝いをしたりといった主客両方を経験することで、もてなすということの意味を、きちんと理解できるようになったと思います。
それは簡単に言ってしまえば、一番に考えるのは自分のことではなく、相手のことだということでしょう。言葉にすると簡単なのですが、それを実感させてくれたのが茶道です。

-茶道を経験することで、それ以前とは変わったなと思うことはありますか?
おもてなしの意味とも関係するのですが、日常生活の至る場面で目にするものや口にするもの、手に触れるものを大切にするようになったと思います。作った方のことはもちろん、素材や作り方、歴史など、それらの背景というものを考えるようになりました。相手のことを第一に考えるという精神に通じるものだと思います。
例えばですが、映画はエンドロールまでしっかりと見るようになりました(笑)
仕事柄、色々な土地に行っていますので、ロケ地のことも気になるようになりましたし、どなたが方言指導や所作指導をされているのかも気になるようになりました。気が付くと、その奥にまで考えを巡らせているのです。

-最後に、ご自身にとって茶道とは何ですか?
心の中までご指導いただける、素晴らしい精神的な修行の場だと思います。
不思議なもので、雑念が入ったお茶をお出しすると、必ず先生に見透かされてしまいます。間違えないようにしよう、綺麗に見せようと思うと、すぐにお叱りのお言葉が返ってくるのです。
現在の世の中は、どちらかというと見た目を重視しがちな社会です。特に仕事をしていると、体裁だけ繕うような場面に数多く遭遇します。そして、そのような場面で卒なくこなせることが求められる社会であるとも言えるでしょう。
そんな中で、茶道は、見た目ではなく中身が重要だと気付かせてくれる場です。 これからもずっと、私にとって茶道は、自分自身を磨き高めるための勉強の場であり続けてくれると思います。

プロフィール

齋藤 宗純(さいとう そうじゅん)
出身地:岩手県 年齢:42歳 茶道歴:18年 所属支部:東京支部(全国青年部連合会理事)